多くのマンションにおいて、いずれかの専有部分に立ち入らなければ、給排水管を点検・修理更新することができない構造となっています。
区分所有者や居住者が立ち入りを承諾しないと漏水等を生じさせ、あるいは漏水等を拡大させることにつながってしまうにもかかわらず、現実には、区分所有者や居住者の立ち入り拒絶によって点検・修理・更新ができないという問題が、しばしば発生しています。
東京地判26.8.9は、管理組合が排水管・汚水管の更新のために、専有部分内の工事を実施しようとしたところ、区分所有者Aがこれを拒んだケースです。
判決では、「Aが本件工事の実施を受け入れることは受忍限度の範囲内にあり、Aが本件工事の実施を拒否することには正当性や必要性が認められない。
他方、本件工事を実施することができない場合、本件建物の下階に位置する居室に居住する区分所有者が漏水事故による不利益を被る可能性が高く、本件工事を実施する必要性は大きいことに照らすと、Aの本件工事の実施を拒否する行為は、区分所有者の共同の利益に反する行為にあたる」として、専有部分内の工事の承認と工事の施工の妨害の禁止が命令されています。