多くの管理組合は、管理事務を管理会社に委託していますが、果たして管理会社を十分に使いきっているでしょうか?委託費に値するだけの管理サービスを受けていますか?その結果、管理費をムダに使っていませんか?
管理組合は、マンションという相当大きな資産を、委託費を支払って管理会社に任せていますので、そこに居住する組合員等は、安全で快適な住環境の保持というサービスを受けなければなりません。
まず、委託費に値するだけの管理サービスを受けているかをチェックする必要があります。
チェック1
管理会社を系列からみると、不動産会社系、建設会社系、商社系、金融機関系、公的機関系、独立系に分類することができます。系列下にある管理会社が、新築マンションを90パーセント以上独占的に受託しています。それぞれの系列で特徴がありますので、系列以外の管理会社と比較しながらチェックしてみましょう。
チェック2
国交省の「マンション標準管理委託契約書」(以下「標準」という。」を参考にして(比較して)チェックしてみましょう。
なぜならば、管理会社の作成した契約書では管理組合が不利になっている場合があるからです。次に具体例の一部を掲げます。
1.標準第3条
管理組合は、管理事務(マンションの管理に関する業務)を管理会社に委託していますが、標準の委託の内容は、一・事務管理業務、二・管理員業務、三・清掃業務、四・建物・設備管理業務の4項目になっており、実施方法についてそれぞれ別表が添付されていますので、その別表で受託業務の範囲や内容を詳細にチェックしてください。
管理会社は、管理委託契約に基づいて受託業務を適切に処理しなければなりませんが、管理組合が気づかないまま、受託業務が不履行になっている場合がありますのでチェックしてみましょう。
よくある不履行には
・ 毎月、管理費等の滞納状況を報告することになっているが、これがない。
・ 前月における会計の収支状況の書面提出がない。
・ 計算ミスや記載漏れが多い。
・ 週5回清掃することになっているのに、週3回しか清掃していない。
・ 管理員が、管理員業務を超えて、緊急性も管理組合の承認もなく工事を発注したり、物品を購入したりする。
2.標準第3条別表第1
管理組合は、管理組合の出納業務を管理会社に任せます。ここがキチンとしているかは、管理会社を見極める重要なポイントの一つになります。どのような方法をとっているかをチェックしてください。
「マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則」第87条に従って、管理会社が行う財産の管理方式は、基本的にはイ、ロ、ハの3通りです。管理組合が注目・検討しなければならないポイント
・銀行印が管理組合保管か、管理会社保管か
・通帳が管理組合保管か、管理会社保管か
・通帳名義が管理組合理事長名義か、管理会社名義か
・保証契約が必要か否か
・保証契約の保証範囲・制限
3.標準5条、第12条
管理組合は、「管理会社が単に受託業務を処理すればよいというだけではなく、一般的に管理会社が普通払うであろう注意をもって受託業務を処理しなければならない」ということを知っていなければなりません。管理会社は、立場上、管理組合より早く老朽化や危険性を察知し報告しなければなりません。また、その対策について意見を申し出なければなりません。
4.標準第6条(管理事務に要する費用の負担及び支払方法)
定額委託業務費の額およびその内訳をみましょう。
定額委託業務費以外の費用の額および内訳をみましょう。
5.標準第8条(緊急時の業務)
管理会社は、夜間や休日、諸設備が故障したとき、迅速にその復旧にあたりますか?
専有部分であっても、上階の住戸が下階に漏水事故を起こしたとき、本来加害者・被害者の関係で解決すべき問題であるかもしれませんが、第一次的には管理会社がその是正・調整をしなければ何のための管理会社なのかわかりません。
6.標準第16条(守秘義務)
管理員や清掃員は、挨拶から始まって、だんだん居住者と親しくなっていきます。特に管理員は、経済的な実態までも知る機会があります。管理員や清掃員が通常他人に知られたくないことがらを他に漏らしてトラブルを引き起こしていませんか?
7.標準第19条(解約の申入れ)
民法第651条の規定を踏まえ、契約当事者双方からの任意解除権を規定したものです。この任意解除権の規定が契約書に含まれていますか?
8.標準21条(契約の更新)
契約の有効期間が満了したときに一旦契約を終了させます。改めて契約のし直しとなり、重要事項説明もする筈です。いわゆる「自動更新」になっていないか確認しましょう。
チェック3
平成17年12月に、国土交通省から『マンション管理標準指針』が公表されていますので、これを活用してチェックしてみましょう。
チェック4
一応、「国土交通省ネガティブ情報検索システム」を見てみましょう。マンション管理業者の行政処分歴がわかります。
管理会社とのつきあい方
管理会社に任せきりではあまりよくないことはいうまでもありませんが、根拠もなく管理会社を疑ってかかることも得策ではありません。
管理組合と管理会社との間に緊張感がないというのがよくないのです。
緊張感のある信頼関係をもちましょう。
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管理組合に求めること・管理会社に求めること
管理会社の管理の良し悪しは、まず、会社の規模の大小に関係なく、フロント、会計担当、管理員、清掃員の4名の良し悪しでしょう。人の住むマンションという性質上、これら4名の、いわゆる、人間力が直接的に管理に影響を及ぼすからです。
次に、管理組合の管理の良し悪しは、管理組合が、管理会社の取得した管理情報を、どれだけ共有しているかです。
管理組合は、管理会社に契約通りの業務をキチンとさせなければなりませんが、管理組合が主体性をもち、自主的に方針を決め、重要なところは管理組合が押さえるためには、管理組合が管理会社と同等の管理情報を取得していることが条件となります。管理組合は、管理会社と同等の管理情報を持っていなければ管理会社を評価できないし、また、管理会社を信頼できるかどうか判定できないからです。